「フィラグリン」とは?アトピー性皮膚炎との関係について紹介
「フィラグリン」は、皮膚に存在するタンパク質の一種で、アトピー性皮膚炎とも深い関わりがある物質です。しかし、フィラグリンという名称を聞いたことはあるものの、どのような物質なのか、アトピー性皮膚炎にどう関わってくるのかがよくわからないという方もいるでしょう。
そこで今回は、フィラグリンの働きや効果、アトピー性皮膚炎の関係などについて解説します。
フィラグリンって何?
フィラグリンとは、皮膚の角層(皮膚の1番外側)の細胞を構成するたんぱく質です。角層内で水分を含有・保持する役割を担う天然保湿因子(NMF)の元になる役割があります。
フィラグリンの効果
フィラグリンの主な効果は下記の2つです。
- 角質細胞を頑丈に保つ
- 皮膚を保湿する
フィラグリンには、角層の骨格となるケラチン繊維というたんぱく質を集めて束ね、角質細胞を丈夫にする働きがあります。また、角層を丈夫にする過程で酵素によってアミノ酸に分解され、天然保湿因子(NMF)の原料になります。
角層には乾燥や雑菌、紫外線などの外部刺激を防ぐバリアとしての役割がありますが、バリア機能が正常に働くには潤いが欠かせません。つまり、フィラグリンは、角層のバリア機能を正常に保つために欠かせない物質ということです。
フィラグリンとアトピー性皮膚炎の関係
角層のバリア機能の維持に欠かせないフィラグリンは、アトピー性皮膚炎と深い関わりがあります。これまでアトピー性皮膚炎は、生活環境が原因で発症する病気だと考えられていました。
しかし、アトピー性皮膚炎の患者さんのなかに、フィラグリンの遺伝子変異が起き、フィラグリンが消失したり減少したりしている方がいることがわかったのです。
フィラグリンが消失・減少すると皮膚の保湿機能が下がり、皮膚のバリア機能が低下して外部刺激を受けやすくなります。そして、外部刺激に対してアレルギー反応が出て、皮膚に炎症が起こるのです。
すべてのアトピー性皮膚炎の患者さんにフィラグリンの遺伝子変異が見られるわけではありませんが、フィラグリンがアトピー性皮膚炎の治療に役立つとして研究が進んでいます。
フィラグリンを増やす方法はある?
フィラグリンの研究が進んだ結果、以下のようないくつかの成分にフィラグリンを増やす効果が期待できることがわかっています。
- ツバメの巣エキス
- インチンコウエキス
- マンダリンオレンジ果皮エキス+サガラメエキス
- デフェリフェリクリシン
それぞれの成分について、くわしくみていきましょう。
ツバメの巣エキス
中華料理の高級食材であるツバメの巣から抽出されたエキスには、体内で細胞のアンテナとして働く糖鎖栄養素や成長因子のEGFなどが豊富に含まれており、美容・健康によいとされています。
また、ツバメの巣エキスを投与した後にフィラグリンが増加したとの研究結果があり、アトピー性皮膚炎の症状改善効果が期待できるといわれています。
ツバメの巣とアトピー性皮膚炎の関係についてはこちら
https://tsubame-lab.jp/effect-efficacy/873.html
ツバメの巣の肌への効果の詳細はこちら
https://tsubame-lab.jp/effect-efficacy/807.html
デフェリフェリクリシン
デフェリフェリクリシンとは、日本酒や酒粕、米麹などに含まれる成分です。このデフェリフェリクリシンにも、フィラグリンを増やす効果があるとの研究結果が出ています。
日本酒が美容によいとして、化粧品や入浴剤などに使われることがあるのは知っている方が多いでしょう。
今後はさらにデフェリフェリクリシンによるフィラグリン増量の効果を活用した、皮膚のバリア機能に働きかける化粧品やアトピー性皮膚炎治療薬なども開発される可能性があります。
インチンコウエキス
インチンコウエキスは、成熟したカワラヨモギから採取されるエキスで、「カワラヨモギエキス」と呼ばれることもあります。インチンコウエキスを角層につけると、フィラグリンの発現を促す作用があることが研究で判明しています。
なお、インチンコウは、生薬として用いられる植物です。黄疸や二日酔いなどの症状が出ているときに用いられるほか、アレルギー性疾患の予防・治療に役立つといわれています。
マンダリンオレンジ果皮エキス+サガラメエキス
マンダリンオレンジ果皮エキスとサガラメエキスの混合物を使用したスキンケア製品にも、フィラグリン発現の作用があることがわかっています。
マンダリンオレンジ果皮エキスとは、名称どおりマンダリンオレンジの果皮から抽出されるエキスです。「チンピエキス」と表記されていることもあります。サガラメエキスとは、サガラメという海藻から抽出されるエキスです。
研究はマンダリンオレンジ果皮エキス単体、サガラメエキス単体、マンダリンオレンジ果皮エキスとサガラメエキスの混合物で行われました。
その結果、マンダリンオレンジ果皮エキス単体ではフィラグリン発現が見られなかったものの、サガラメエキス単体、マンダリンオレンジ果皮エキスとサガラメエキスの混合物ではフィラグリンが発現しています。
参考 https://www.shinryo-to-shinyaku.com/db/pdf/sin_0057_03_0239.pdf
保湿改善には保湿成分のある化粧品を活用しよう!
フィラグリンは角層を構成するたんぱく質であり、皮膚のバリア機能や保湿力の維持などの役割をもつ物質です。フィラグリンが不足すると皮膚の潤いが減り、バリア機能が低下するため外部刺激への抵抗力が落ちてしまいます。
また、フィラグリンの遺伝子変異によってフィラグリンが消失・減少し、アトピー性皮膚炎を発症するケースがあることも判明しています。
ツバメの巣エキスやデフェリフェリクリシン、インチンコウエキスなどにフィラグリンを増やす効果が期待できるといわれているため、皮膚の保湿力を改善したい場合はこれらの成分が配合された化粧品を活用してみましょう。