シアル酸とは?
その効果と含有量の多い食品

ツバメの巣に多く含まれるシアル酸。
美肌や育毛にとどまらず、近年はアレルギーのある方などに
対しても幅広い効果が期待できることが分かってきました。
この記事ではシアル酸が身体におよぼす影響と、シアル酸を多く含有する食品について解説していきます。

シアル酸とは?

シアル酸とは?

シアル酸はツバメの巣に多く含まれており、他にも、ローヤルゼリー、母乳、脳の神経細胞、生殖器官といった人の体内にも含まれます。

シアル酸は免疫機能の維持向上に欠かせない「糖鎖」を構成する要素の一つです。糖鎖には細胞の働きを正常に保ち、免疫機能を整えてウイルスや細菌から体を守る働きがあり、他にも育毛、美肌、癌やアレルギー緩和などに関わっていると考えられています。

「糖鎖」とは糖鎖栄養素が鎖状につながったもので、細胞の周囲にまるで産毛のようについています。この糖鎖は細胞同士の情報伝達に関わったり、細胞の外の情報をキャッチし、細胞内に伝達したりする役割を果たすことから「細胞のアンテナ」とも言われます。近年、この糖鎖が病気を防ぎ健康寿命を保つための重要な働きをしていることがわかってきました。

免疫システムを中心に糖鎖が正常に機能するには、糖鎖を構成する8種類の糖鎖栄養素が不足しないようにしなければなりません。その8つの糖鎖栄養素のひとつが「シアル酸」なのです。

シアル酸の効果①

菌やウイルスの侵入防止

菌やウイルスの侵入防止

シアル酸を含む糖鎖栄養素は体内に侵入してくる病原体を検知し、免疫細胞にそれらを除去する指令をします。この働きによりシアル酸はウイルスや菌の侵入から体を守ります。

糖鎖の先端が異物に触れることで、様々な情報が細胞内に取り込まれます。例えば菌やウイルスが体内に侵入してきた場合、免疫細胞はアンテナの先端に触れたときに、それらが何なのかを判断し、糖鎖を通じて他の細胞に対処法、つまり攻撃する指示を出します。

糖鎖に異常があると、こうした免疫システムが機能せず、ウイルスがどんどん増殖して健康な細胞が攻撃を受けてしまいます。菌やウイルスの侵入を防止するためにも、シアル酸の存在は重要なのです。

インフルエンザウイルスにもシアル酸が有効であるとの研究結果が出ており、タミフルなどの抗インフルエンザ剤はシアル酸の構造を基に作られました。

シアル酸の効果②

育毛

育毛

シアル酸には神経刺激作用があり、育毛効果が期待できます。名古屋市立大学のマウスを使った実験では、シアル酸に育毛効果があることが明らかになりました。

シアル酸の中にある代表的な物質「NANA(N-アセチルノイラミン酸)」は、皮膚の知覚神経を直接刺激します。また、消化管の知覚神経刺激を介して、皮膚のIGF-I産生を増加させます。増加したIGF-1が受容体に作用すると、髪の毛の成長期が延長し、髪の毛が抜ける休止期が短くなります。これが、シアル酸が抜け毛・薄毛を予防し、育毛・発毛を促進するメカニズムです。

この研究によると、薄毛の男性10人の頭皮に、半年間1日1回、シアル酸を塗る実験で、実に5人に増毛が認められました。シアル酸の神経刺激作用を通じて、細胞間のコミュニケーションが円滑になり、情報伝達がスムーズになったことで、育毛効果が得られたと考えられます。こうしたメカニズムが働くならば、育毛だけでなく、肌の弾力性上昇といった効果も期待できると考えられています。¹

※1
岡嶋研二 . (n.d.). 唾液成分シアル酸の育毛効果--その発現メカニズムと薄毛治療への応用. CiNii Research. Retrieved December 20, 2022, from http://ci.nii.ac.jp/naid/40016866029/

シアル酸の効果③

美肌

美肌

シアル酸は細胞と細胞をつなぐ情報伝達係として働くことで、シミ、シワ、たるみなど体内の酸化を防ぎ、引き締まった毛穴や弾力のある肌へ導きます。

また、シアル酸はコラーゲンの素と言われています。コラーゲンになった繊維状のタンパク質は、組織や細胞を繋ぎ合わせる接着剤のような役割があり、体の形成や機能の正常化に不可欠な成分です。

皮膚を構成する真皮のうち、70%を構成している成分がコラーゲンです。水分の保持や体温の維持といった外側から体を守る役割を果たす表皮と比べて、真皮は表皮の内側で肌のハリや弾力を保ち、維持する役割があります。またシアル酸は美肌の司令塔として、コラーゲンやヒアルロン酸を必要な所へと誘導してくれることから、美肌効果が期待できると考えられています。

シアル酸の効果④

癌の転移

シアル酸を含む糖鎖栄養素は、癌の増殖や転移抑制効果があると言われています。糖鎖は癌細胞やウイルスに対して免疫細胞に攻撃命令を出す役割を果たしています。

そもそも癌細胞が無害なのか有害なのかを判断するのも糖鎖の役割です。つまり、糖鎖に異常が起こると「癌細胞を有害なものだ」と認識できないため、癌細胞が育ってしまうことになるのです。

癌化したウイルスやウイルス感染細胞を糖鎖が察知すると、癌細胞に強いNK細胞にSOSを発信し、NK細胞が癌細胞を攻撃します。癌細胞が一掃された後には新しい健康な細胞がコピーされます。

健康な人の体の中では糖鎖が正常に機能し、免疫細胞ががん細胞を一掃してくれるので、ほとんどの場合癌発生には至りません。また、すでに発生してしまった癌に対してもシアル酸を含む糖鎖栄養素は効果があるとされ、実際にシアル酸によって細胞のアンテナを活性化させることで、がん細胞の転移が抑制されたという報告もあります。

シアル酸の効果⑤

赤ちゃんの脳の発育

赤ちゃんの脳の発育

シアル酸には脳・神経系の発達促進効果があります。人の母乳中には0.3~1.5mg/mLのシアル酸が含まれています。乳児期には脳の神経細胞が急激に増加するため、シアル酸は授乳を通して、脳の機能発現や発達に重要な役割を果たすと考えられています。

シアル醸含有成分の学習・記憶力向上効果について調べたマウスによる実験では,シアル酸などを含む飼料を2週間投与して水迷路試験を実施したところ、シアル酸含有群では到着時間が短くなる傾向を示し、成績向上効果が期待できる結果となりました。

²シアル酸は細胞膜の構成成分である糖脂質および糖たんぱく質として脳や中枢神経系に多く含まれていて、シアル酸の摂取は中枢神経系の器官形成と機能発達に関与します。新生児はシアル酸の合成能力が低いため、母乳はシアル酸の重要な供給源として考えられています。

※2
乳由来シアル酸含有成分の粉ミルクへの応用. (n.d.). Retrieved December 20, 2022, from https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010810708.pdf

シアル酸の効果⑥

アレルギー緩和

アレルギー緩和

シアル酸はアレルギー症状を緩和することが知られています。

アレルギーとは免疫機能の異常状態です。花粉症やアトピー性皮膚炎も、アレルギー疾患に挙げられます。たとえば花粉症は、何らかの原因で糖鎖に異常をきたし、花粉を異物だと認識した免疫細胞の機能で鼻水や目のかゆみ、くしゃみなどが引き起こされます。

また、花粉による皮膚炎は、肌内部の水分が減ってバリア機能が低下した肌に花粉が入り込むことで炎症が生じます。アトピー性皮膚炎では、先天的に皮膚のバリア機能が不足していることもありますが、生活環境因子による水分喪失やセラミド不足によるものも多くあります。

シアル酸によって細胞接着を抑制することで、炎症を抑える効果が期待でき、アレルギーの緩和につながると考えられています。

シアル酸は何から摂取できる?

英語でシアル[sial]とは、唾液[saliva]を意味する通り、元々は唾液中の免疫成分のひとつとして発見されました。シアル酸は母乳にも含まれ、口から侵入するウイルスや菌が消化管に付着するのを防ぎ、感染を予防する効果を発揮しています。

食べ物では鶏卵や牛乳がシアル酸を含みます。卵に関しては、特にカラザと呼ばれる白い小さな塊に多く含まれています。これは卵が回転しても卵黄が卵の中心に保たれる働きをするものです。一般的に卵は母体の外で育つため、外敵に見つかりやすく、外敵を察知するアンテナとなるシアル酸を張り巡らせている可能性があるそうです。

アナツバメの巣は高級中華料理や漢方で使われることが多く敷居の高いイメージですが、サプリメントなどで摂取することができます。ただし、中には動物虐待にあたる養殖やケミカルを混ぜた偽物など、環境や人体に有害なものもあるため、信頼のあるブランドから購入することが重要です。³

※3
卵のあれこれ. 総合南東北病院 - すべては患者さんのために. (n.d.). Retrieved December 20, 2022, from https://www.minamitohoku.or.jp/up/news/etc/tamago.htm

シアル酸を多く含むのはアナツバメの巣

シアル酸を多く含むのはアナツバメの巣

アナツバメの巣に含まれるシアル酸含有量

アナツバメの巣は糖鎖をつくる8つの栄養素のうち、実に6つの栄養素を含んでいる食材です。これほど糖鎖が含まれている素材はツバメの巣以外に存在しません。それだけでなく、「ムチン」といった糖タンパク質、アミノ酸、カルシウム、成長因子など、美容と健康に効果的な成分が多く含まれています。

アナツバメの巣は日本で見かけることのある泥や枯葉で作られたツバメの巣とは全く違い、ほぼ全体が唾液だけでできています。繁殖期のアナツバメは粘性の強い唾液を分泌し、30日ほどかけて人間の手のひらくらいの大きさの巣を完成させます。これにはシアル酸を有する良質の糖たんぱく質が豊富に含まれています。

唾液100g中のシアル酸含有量を比べてみると、人の唾液は6mg、ミツバチの唾液(ローヤルゼリー)は50mgであるのに対し、ツバメの唾液は10,000mg含まれており、ツバメの巣にはローヤルゼリーと比べて、なんと200倍ものシアル酸が含まれていることになります。⁴

※4 今田勝美「糖鎖の末端についている活性分子、シアル酸」ヘルス研究所,2011

アナツバメの巣は天然を選ぶ

アナツバメの巣には「天然」「偽物」「養殖」の3種類があります。

「偽物」はツバメの巣そっくりに作った木型に食感の似た材料を流し込んで作ったものや、粗悪品に化学薬品で色をつけて価値を吊り上げたものが横行しています。製造された偽物には「天然」と謳ったシールが貼られます。一流のレストランが買い付ける場合もあり、見極めが困難です。

「養殖」のツバメの巣も存在します。業者は廃墟ビルや専用に建てられたコンクリートのビル、バードハウスなどで、アナツバメの鳴き声をスピーカーで流すことで仲間をおびき寄せて、巣を作らせます。養殖は無理やりアナツバメを住みつかせるので、生態系を変えてしまう恐れがあります。また、空気の澄んだジャングルではなく、都会の排気ガスで汚染された空気で巣が作られるので、アナツバメにとっても良い環境ではありません。

一方、「天然」はヒナが巣立った後の巣を採取したもので、アナツバメは同じ巣を2度と使わないことから生態系への影響がありません。また、巣が獲れるジャングルや洞窟は、その環境が国家によって厳重に守られているのが一般的で安全性が高いと言えます。さらに、天然の巣は養殖と比べてミネラルなどの栄養素が豊富だと言われています。

ツバメの巣を選ぶ時は「天然」を選択することで、健康面、美容面、また、環境や動物たちへの配慮という面においても安心で、良い効果が得られる可能性が高いと考えられます。

天然と養殖の違いを詳しく知る

シアル酸の効果を知り、美容と健康を維持しよう

シアル酸は「細胞のアンテナ」となって細胞の働きを正常に保ち、免疫機能を整えてウイルスや細菌から体を守る重要な成分です。人間の唾液や母乳にも含まれており、乳児の脳の発育を促進したり、髪や肌を健康に保つことに効果を発揮します。

また、インフルエンザや癌の転移の抑制の予防にも効果が見込めるとして、今後さらに活用の幅が広がっていくポテンシャルに満ちた成分です。

卵や牛乳など食べ物からシアル酸を摂取できる量は微量ですが、特にツバメの巣にはローヤルゼリーと比べて200倍ものシアル酸が含まれており、効果的に成分を摂取することができます。自然界からの贈り物である天然のツバメの巣からは特に豊富なシアル酸が摂取できます。様々な効果が期待できるシアル酸を積極的に摂ってより美しく健康になりましょう!